学会名: CORS-INFORMS Joint International Meeting
開催期日: 2004年5月16日−19日
開催場所: Banff Centre (カナダ,バンフ)

1. 学会の概要

本学会は,米国のオペレーションズ・リサーチ&マネージメント・サイエンス学会(INFORMS)が年に2回行う会議の1つであり,今回はカナダのオペレーションズ・リサーチ学会(CORS)と合同で開催された。米国・カナダを中心に世界のOR関連研究者が集まる大規模な会議であり,26のパラレルセッションで発表が行われた。

2. 興味深かった講演

今回聴講した講演のうち,興味深かったものに関するメモを以下にまとめる。2002年秋に参加したINFORMS Meetingでは,金融工学やそれに関連の深い動的計画法関係の発表が多数あったが,今回は非常に少なかったのが残念であった。なお,研究会のプログラムは http://www.informs.org/Conf/CORS-INFORMS2004/index.html で見ることができる。

(1) Portfolio Selection: Methods, Implementations and Improvements
  Kam Moud(Queen's School of Business, Ontario, Canada)


資産ポートフォリオの最適化問題においては,Markowitzによる平均-分散基準による戦略の他にも,最大損失を最小化するMin-Max戦略,今野らが提案した平均-絶対偏差による戦略,Coverらによるユニバーサルポートフォリオ,HelmholdらによるExponentiated Gradientなど各種の戦略が提案されている。本研究では,まず平均-分散戦略,Min-Max戦略,平均-絶対偏差戦略の3つを取り上げ,それぞれを用いてIBMなど5社からなる株式のポートフォリオ最適化を過去2年間のデータを用いて行った。その結果,投資家の効用関数がCRRA(Constant Relative Risk Aversion)型の場合には,リスク回避度が高くなるにつれて平均-絶対偏差戦略がもっとも性能(効用)が高い戦略となることを示した。また,ユニバーサルポートフォリオとExponentiated Gradientとを比べた場合には,後者が一貫して性能がよいこと,後者においては学習率の設定が重要であることなども示した。

(2) Portfolio Selection with Transaction Costs and Delays
  Tim Maull and Jussi Keppo(University of Michigan)


Black-Scholesモデルに従う株式と安全資産の2つが市場に存在し,株式の売却の際には(1-a)S+F(Sは売却価格,a,Fは定数)の取引コストがかかり,かつ取引指示を出してから実際の取引が行われるまでにΔの時間遅れがあるというモデルの下で,最適取引戦略を求める問題を定式化した。まず,投資家の時間軸のランダマイゼーションという技法を用いて時間変数を消去する。これにより,問題は株価yと安全資産の価格xが与えられたとき,y/xの値に応じて投資家の最適行動(株式の購入,売却あるいは現在のポジション保持)を決定する問題に簡略化される。この問題に対してHamilton-Jacobi-Bellman方程式を立て,時間遅れによる株価変動を考慮した上で,2つの境界(購入と保持,売却と保持の間での)上で価値関数とその1階微分が連続であるという条件を課すことにより,境界の位置が定められる。本手法に基づいてテスト問題で計算を行ったところ,時間遅れが増大するにつれて,購入-保持の境界と売却-保持の境界との距離は増大する(すなわち現在のポジションを保持すべき領域が大きくなる)という結果が得られた。

(3) Cost-Benefit Analysis of Cooperative & Non-Cooperative CO2 Policies
  with an Integrated MARKAL Model
  Maryse Labriet(GERAD Group for Research in Decision Analysis, Canada)


全世界における様々なエネルギーの生産・転換・利用を記述する線形計画モデルとしてMARKALと呼ばれるモデルがある。本研究ではこのMARKALモデルを利用し,今後数十年にわたる全世界でのCO2排出量の予測を行った。各国がCO2排出量削減に協力する場合,しない場合の2通りのシナリオで分析を行ったが,排出量増加による温暖化の影響は各国が等しく受けるため,いくつかの国では排出量削減に協力しないことによる経済成長などのメリットのほうが温暖化のコストを上回り,協力は不安定となるという結果が得られた。また,協力が行われた場合,排出量は協力がない場合に比べて21%削減できるという結果が得られた。

(4) Statics and Dynamics of Global Supply Chain Networks
  with Environmental Decision-Making
  Anna Nagurney(University of Massachusetts)


e-コマースを利用したグローバルなサプライ・チェーン・ネットワークにおいて,環境への影響を考慮に入れた場合に各主体の取る行動を最適化問題として定式化した。ここで,主体とは製品の製造者,e-コマースにおける仲介者,販売者などであり,主体の取る行動とは,製品の仕入先,納入先,各製品の取引量などの決定である。これらの要因によって製品調達・販売における様々なリスクや製品輸送によるCO2排出量などが変化し,各主体は利益最大化,リスク最小化,CO2排出最小化などの多目的最適化問題を解くように行動する。これは複数主体による意思決定問題であり,均衡点の決定は変分不等式問題として定式化できる。この問題を動的な問題へと変換し,オイラー法によって解を求めるアルゴリズムが示された。

(5) A Non-Sequential Dynamic Programming Approach for Cyclic
  Natural Gas Pipeline Systems
  Roger Rios(Universidad Autonoma de Nuevo Leon, Mexico)


ガス会社においては,ガスの製造,輸送,販売における最適化が重要である。このうち輸送では,長距離の配管を通じてガスを運ぶため,途中にコンプレッサーを設けてガスを再加圧することが必要となる。したがって輸送の最適化は,需要と供給に関する条件の下で,コンプレッサーに要するエネルギー(輸送量の非線形関数)を最小化するように配管のネットワークへ輸送量を割り当てる問題となる。これは非線形かつ非凸の制約付き最適化問題のため解くのが難しいが,配管のネットワークがサイクルを含まない場合は動的計画法により解くことができる。本研究では,サイクルが存在する場合でも,サイクル中に含まれる複数のコンプレッサーを融合して仮想的なコンプレッサーとして扱うことによりサイクルを解消でき,動的計画法により解を求められることを示した。

(6) A Pivoting Algorithm for a Class of Second-order Cone Programming
  村松正和(電気通信大学)


Second Order Cone Programmingのあるクラスの問題に対して,線形計画法の単体法と同様にピボット交換により関数値を減少させていくアルゴリズムを提案した。単体法では,各辞書において,次の性質を持つサブ問題(非基底変数を1つ選んだときの1次元線形計画問題)が定義できる。
 (i) 各サブ問題の解は簡単に求められる。
 (ii) もしサブ問題のうちの1つが無限解を持つならば,元の問題も無限解を持つ。
 (iii) もしサブ問題が自明でない解を持つならば,ピボット交換が可能。
 (iv) もしすべてのサブ問題が最適解に到達しているならば,元の問題も最適解に到達している。
本研究では,SOCPのあるクラスに対して,実行可能な辞書が与えられたときにこのようなサブ問題が定義できることを示した。また,縮退がないという条件の下で,ピボット交換を行うことにより実際に関数値を減少させられることを示した。しかし,SOCPでは一般に辞書が無限個存在するため,有限回の反復での収束を示すのは簡単ではない。また,実行可能な辞書を見つけるには(主双対単体法の場合と同じように)双対問題におけるピボット交換アルゴリズムの開発も必要である。これらが今後の課題となる。


学会出張報告のページに戻る
Topに戻る