2003年度後期 応用数学 授業アンケート集計結果


授業アンケートでは全部で26名の方から回答を頂きました。ご協力ありがとうございました。
この応用数学の授業は私にとって大学での初めての正式な授業だったので,皆さんから頂いた
コメントや提案は,大変参考になりました。

以下にアンケートの集計結果を載せます。また,皆さんから寄せられたコメントにも,できる
だけ答えていきたいと思います。

なお,このページの構成は以下の通りです。

  I. 受講者自身に関わる質問
  II. 授業方法に関する質問
  III. 授業内容に関する質問
  IV. おわりに



I. 受講者自身に関わる質問

(1) あなたの出席率は高かったですか?

  


(2) 授業ノート・教科書を活用しましたか?

  


(3) 授業で使った数学について,十分な基礎知識を持っていましたか?

  

  基礎知識が足りなかったとすれば,それはどの部分ですか?(自由回答)

   ・線形代数(全学教養科目でしか習っていないので知識が浅い。)
   ・線形代数が苦手。行列の知識があいまいだった。
   ・線形代数。
   ・線形代数。
   ・誤差の部分の知識が自分の中では足りなかった。
   ・1年の数学基礎で学んだこと全般
    (数学基礎の内容が工学部向けでなかった気がするので,あまり身に付いていなかった)。


(4) 授業で学んだ解法をプログラミングできる環境を持っていましたか?

  


(5) 授業で学んだ解法をプログラムできるプログラミング能力を持っていましたか?

  


(6) 自分の将来の研究あるいは仕事で,数値計算が必要となる機会があると思いますか?

  


以上,アンケートの第I部では,受講者自身に関することを聞きました。問(6)の結果からわかる
ように,数値計算の必要性を強く感じている人が多いようです。そのためか,授業の出席率も
高く,ホームページに掲載した授業ノートもしっかり活用してもらえたなど,受講者のやる気は
かなり高かったと感じています。

ただ,数値計算を学ぶに当たって前提となる基礎知識・能力に関しては,必ずしも十分ではない
と感じている人が多かったようです。たとえば,授業の後半でやった偏微分方程式の解法,連立
一次方程式の解法などでは,行列の固有値,対角化,基本変形など線形代数の知識をたくさん使い
ますが,問(3)の自由記述からわかるように,線形代数が苦手な人が多かったようです。また,
プログラミングについても,自由に使える環境を持っている人は2/3程度に留まり,授業で学んだ
解法をプログラミングできるだけのスキルを持っていないと感じる人も半分程度いました。

来年度の授業では,このような状況を念頭に置いて授業の内容・方法を見直すつもりです。基礎
の不足を応用数学の授業内でどの程度補えるかは,時間の制約もあり難しい問題ですが,以下の
自由記述で提案してもらったやり方を参考にして考えたいと思っています。


II. 授業方法に関する質問

(1) 説明は聞き取りやすかったですか?

  

  自由意見

   ・マイクを使っていて聞きとりやすい。話すスピードも良い。
   ・まれにマイクを使わなかった時は,部屋の大きさもあり聴き取りづらかった。


(2) 黒板などの使い方や版書は適切でしたか?

  

  自由意見

   ・少し字が小さかったです。
   ・字が小さくて見にくい。
   ・字が小さくて読みにくいことがあった(添字など)。
   ・文字が小さくて添字が見にくかった。
   ・添字は小さくなってしまうので,もう少し大きく書いて欲しい。
   ・添字が見にくいときがあった。
   ・添字が見づらい。
   ・添字が見にくかった。
   ・添字の部分をもう少し見やすくしてほしかった。
   ・添字が小さく,後からは見にくかった。
   ・版書がとてもきれいで驚きました。
   ・字が大変丁寧で見やすかったです。
   ・式の羅列になってしまい,解説も書いてほしい。
   ・消されるまでの時間が多少早かったように思う。
   ・スライドの切換えがちょっと早かった。


(3) 授業の進み具合はどうでしたか?

  

  自由意見

   ・後半は難しく感じられたので,もう少しゆっくりやって欲しかった。
   ・版書の写しで精一杯。考える余裕がない。
   ・黒板を写すのが大変だった。


説明についてはほぼ合格点をもらえたようですが,板書の字の小ささ,特に添字については
たいへん不評でしたね。今後,気をつけます。「解説も書いてほしい」「消すのが早かった」
という指摘,および問(3)の自由記述での指摘は,短い時間内にたくさんの内容を詰め込もうと
したことと関連すると思います。今後はもう少し内容を精選し,集中して板書を写す時間と例題
を見て理解を深める時間の両方をバランスよく配分するなど,メリハリのついた授業を心がけ
たいと思います。


(4) レポートの回数・問題の分量はどうでしたか?

  

  自由意見

   ・レポート回数を多くしてもよいが,テストの比重を軽くして欲しい。他の講義と比較
    しても負担が重くなりすぎる。
   ・回数は適量だと思いますが,問題の量はちょっと多かったと思います。
   ・分量・難度を落とすかわりに,回数を増やしても良いかと思う。特に様々なアル
    ゴリズムを用いて,具体的な計算をする機会が多い方が良い。
   ・1回分の量はちょうどよいが,〆切がはやかった。
   ・期限が近いわりに量が多い。時間と量の調整を。
   ・回数はちょうど良かったけれど問題数が締切までの期間に対して少し多いかと思
    いました。もう少し時間が欲しいかも。
   ・ちょうど良かった。
   ・授業中の解説があれば,今回の量でも丁度良いと思う。


レポートの1回あたりの問題の量は確かにちょっと多めでしたね。回数を増やし,その代わり
1回あたりは1〜2問に抑えるというのは,十分に考えられる選択肢だと思います。
その場合は,
締切までの時間は今回と同程度で大丈夫ですね。なお,最初のコメントに関してですが,成績
評価における期末試験とレポートとの比重は,今回は約2対1としました。


(5) 授業のやり方について,良かった点,良くなかった点をそれぞれ1つずつ挙げてください。

  良かった点

   ・授業ノートがしっかりまとまっていて助かりました。
   ・授業ノートがあったので,復習に役立った。
   ・分かりやすくまとめ,授業ノートなどをホームページに載せてくれた点。
   ・毎回授業ノートを作成し,また,HPに問題の解答を載せて頂いたので,とても参考
    になりました。
   ・ホームページでノートが公開されたのは,理解に貢献した。
   ・黒板,授業ノート,パソコンを使った計算例など,目的に適した工夫がされていた。
   ・実際に計算していく過程をPCで見せてもらったところ。
   ・PCで実際の計算例を見せてもらえたこと。
   ・例をプログラムでスクリーン上に示してくれた点。
   ・リアルタイムで計算例が見れた。
   ・具体的な例を示してくれて,理解の助けになった。
   ・教科書の説明と授業の説明の2つから理解を進めることができた。
   ・説明はとてもわかりやすかった。
   ・レポートがあった点。
   ・レポートを全部出さなくてもよかったところ。
   ・版書が丁寧だった。


  良くなかった点

   ・レポートが難しすぎた。
   ・(HPでノートを公開すると)ノートを取る機会が減ってしまうという点が挙げられる。
   ・レポートの解答を誰かがやるやり方は,説明がわかりにくかったり黒板が読みにく
    かったりでいただけない気がした。
   ・教科書とのタイアップがわかりにくい。今期の状態なら教科書なしで授業ノートだけ
    で理解した感じだった。
   ・物理とのつながりが見えにくかった。


(6) 授業のやり方について,より良くするためのアイディアがあれば提案してください。

   ・理論解説 → JAVAアプレットで様子説明よりも,JAVAを見せた後,理論解説の方が
    イメージがあって式変形を行うので理解が易しいと思う。理想的に(時間があれば)
    JAVA → 理論 → JAVA のサンドイッチで進むのがいいと思いました。
   ・生徒とコミュニケーションをとってほしい。
   ・進度を変えないなら黒板にも解説を。
   ・実際に例題などを解説する。
   ・もう少し教科書を使って欲しい。
   ・教科書をかえるか,授業中にもっと結びつきをはっきりさせる。
    (どのページのことなのか)
   ・テストに関して,「問題を作成して提出してもよい」ということをもっと早い時期に
    教えてほしかったです。
   ・自分で確認できるよう,授業内容をCなどのプログラム例として配布しては。
   ・実際にコンピュータを動かしたいので,ホームページ上だけでいいのでソースの例を
    公開してもらいたい。


今回の授業方法で特に工夫した点は,授業ノートのホームページ掲載JAVAプログラムを使った
計算例のリアルタイム表示
の2つでした。これらは問(5)のコメントにある通り好評で,よかった
と思っています。授業ノートを担当して下さった皆さん,ありがとうございました。また,JAVA
プログラムの使い方については,問(6)の最初のコメントのようにできれば確かに効果的ですね。
検討します。

教科書については,問(5),(6)で指摘された通り,今回の授業ではあまり参照しませんでした。
授業の準備にあたっては色々な本を参照し,その中で一番わかりやすい説明を元に授業での説明を
考えたのでこのような結果になりました。ただ,問(6)のコメントにあるように,授業でやっている
箇所が教科書のどのページのことなのかを示せば,授業とは別の説明を教科書から学ぶことができ
ますね。次回からはそうします。

「生徒とコミュニケーションをとってほしい」は,今回は確かに一方的に話すだけの授業だったの
で,考えてみたいと思います。

また,期末試験で問題を募集するということも,来年はもっと早く言うようにします。

授業で使ったプログラムの公開については,現在,準備しています。ニュートン法,補間,常微分
方程式の解法,偏微分方程式の解法などについて,JAVAプログラムをホームページからダウン
ロードしたり,実行できるようにする予定
です。ぜひ活用してください。


III. 授業内容に関する質問

(1) 授業のレベルはどうでしたか?

  


(2) 授業はわかりやすいものでしたか?

  

  わかりにくい点があった場合,それはどこの部分でしたか?

   ・今習っているほかの授業と比べ,数学に近いので,数学の知識が足りない分わかりにく
    かった。
   ・数式が複雑な部分が多く,数式を理解するのに気を取られて,内容を理解し損ねそうな
    所があった。
   ・一般化の場合の例が多かったところ。具体例が提示されて欲しい。授業では,分からない
    部分が多かったが,レポートで具体例があり,レポートで手を動かすことで理解が進んだ。
   ・全体的に。
   ・プロジェクターで数値実験をしてから,スクリーンをしばらく下げたままにしてほしい。
   ・科目としてのレベルが高めなので,とっつきにくかった程度。説明はよかった。


授業のレベルはやや高めだと感じる人が多く,わかりやすさについては,比較的わかりやすかった
と感じる人が多いものの,わかりにくいと感じる人も回答者の中で数人ありました。

数値計算法は解析学,線形代数などの数学が基礎になっているので,それらに十分慣れていないと
わかりにくいと感じるかもしれません。工夫としては,必要な数学の知識について,使う前に簡単
な復習をして思い出してもらうなどのやり方があり得ると思うので,検討してみます。ただ,解析
学と線形代数は,他の分野でも基礎となるので,自分でもう一度復習し,自由に駆使できるように
なることを勧めます。


一般例が多かったのでもっと具体例が欲しいというのは確かにその通りですね。これについては最後
の問(7)のところでもう一度考えます。


(3) 授業内容は興味を持てるものでしたか?

  


(4) 授業を受けて,数値計算を自分で行うための力がついたと思いますか?

  


問(3),(4)の結果は,他の設問に比べてかなりばらつきが大きかったです。授業内容にとても
興味を持てたという人たちがいる一方で,あまり興味を持てなかった人たちもいました。なお,
当然かもしれませんが,問(3)の回答は問(2)の回答と非常に相関が高く,問(2)で高いほうに
マークしている人は問(3)も高いほうにマークし,その逆も真でした。そのため,より多くの人に
授業に興味を持ってもらうには,授業内容をよりわかりやすくすることが一つのポイントだと
考えます。

問(4)の結果では,「数値計算を自分で行うための力がついた」という人が予想より少なく,これ
がこの授業の目標の一つだっただけにショックでした。が,今回は数値計算の理論に重点を置き,
プログラミングと演習にはあまり時間を割けなかったので,ある意味では予想できる結果だった
かもしれません。これについては,次の問(5),(6)のところで考えたいと思います。


(5) 今回の授業では数値計算の理論が中心でしたが,もっとプログラミングに重点を
   置いて授業を行うことも考えられます。どちらがよいと思いますか?


   ・もうすこしプログラミングに重点をおいてほしい。
   ・少しはプログラミングに重点をおいた方がよいと思う。
   ・プログラミングを少しは入れないとわかりづらい。
   ・プログラミング。
   ・原理も大切だけどプログラミングや演習等の応用に重点を置いた方が役に立ちそう。
   ・プログラミングはプログラムを実際に作っていくことで理解が深まると思う。なので,
    普通の教室ではなくパソコン(7号館のプログラムが使える環境)があるところで
    すればよいと思う。
   ・PCルームで講義とプログラミングをできるとよい。
   ・プログラミングに興味を持っている人が多いのでいいと思います。
   ・理論とそれを解くためのプログラミングを半々で。
   ・半分半分が良いと思う。自分で式を考える力と実際に使う力とをつけたい。
   ・応物では,1年でFortran,2年でCを学ぶので,3年のこの授業で応用的なプログラムに
    挑戦するのもおもしろいと思います。
   ・プログラミングは別の科目としてやればいいから,このままでよい。
   ・プログラミングの授業は別にあったので,今回の方でよい。
   ・理論がなければプログラミングはできないので,理論中心の方がよいと思います。
   ・理論が中心の方がよいと思う。
   ・理論中心。
   ・数値計算理論中心でよいと思う。
   ・今のままで良いと思う。
   ・今のままで良いと思う。
   ・今までの方向性で。


「数値計算理論中心」「今のまま」という意見と,「プログラミング」という意見が同じくらいの
数だけありました。私としては,問(4)の結果も踏まえ,プログラミングをしてもらう機会をもう
少し増やしたほうがいいのではないかと考えています。

今回の授業でも,レポート課題でプログラミングが必要な問題はありましたが,実はそれらは
すべて選択式になっていて,理論の問題を解けばプログラミングは選択しなくてもよいように
なっていました。これは,必ずしも受講者全員がプログラミングできる環境を持っていないことを
考慮したからです。

来年度の授業では,応物実験のパソコンを利用できるようにする,あるいは7号館の計算機を利用
できるようにするなどの準備をした上で,レポート課題として全員にプログラムを何本か作って
もらう
ことを考えています。これにより,授業で学んだことの理解を深めると同時に,数値計算を
自分で行う力をつけてもらえればと思っています。


(6) 今回の授業では講義が中心でしたが,もっと演習(黒板で問題を解いてもらうなど)
   に時間を割くことも考えられます。どちらがよいと思いますか?


   ・演習を増やした方が理解の助けになるので,もう少し演習があった方がよいと思う。
   ・より演習を取り入れていくと理解が深まると思います。
   ・演習重視が良いと思う。将来役に立ちそう。
   ・演習をふやしたほうがよい。
   ・演習量を増やして欲しい。
   ・毎回,小テストのような形で演習をするとかがよいかも。
   ・例題などを授業中でいくつかやると,もう少し理解は深まると思う。
   ・演習の時間を増やすと理解が深まるが,そのためにはみんなが演習問題を解く必要がある。
    今までのような4回の内から2回選ぶという形を取ると,演習に時間を割くのはあまり
    効果的ではないと思う。
   ・講義時間中は講義中心で良いと思う。
   ・今回通り講義中心で良いと思います。
   ・講義が中心の方がよいと思う。
   ・講義が中心の方がよいと思う。
   ・講義中心でよいと思いました。
   ・講義。
   ・黒板で解くよりも,詳しい答えを書いたプリントの方が欲しい。
   ・今回のようにHP上に解答が掲載されれば,講義中心でよいと思います。
   ・今のままで良いと思う。
   ・これでよい。
   ・状況によりけり。どちらでも構わない。


演習についても,増やしたほうがいいという意見と講義中心でよいという意見は半々でした。
私としては,問4の結果や期末試験の結果を考えると,もう少し演習を増やすべきだったかと
思っています。

増やす方法としては,提案にあるように授業中に小テストのような形で行う方法と,やってきた
レポート課題を黒板でやってもらう方法とが考えられますが,後者の場合はコメントにあるよう
に,全員が課題をやってきていないとあまり効果がなさそうです。II(4)で書いたようなレポート
の出し方の変更も含め,検討したいと思います。


(7) 授業の内容について,もっとこんなことを学びたいという点があれば挙げてください。

   ・どんな場面(社会における)で利用されているのかという点を挙げて学習意欲を刺激
    してはどうか。
   ・実際にどのようなことに応用されているか,など。
   ・実際の実験データの処理。
   ・数学より物理の応用に重点があった方が良いかと思う。
   ・FFTの理論をやってみたかった。
   ・プログラミング。
   ・プログラミングは他の授業でもやっている。これまでにFortran 77,Cなどは学習して
    きたが,そこまで深い理解は得られていない。


いろいろな提案をありがとうございました。数値計算法が物理でどのように利用されるか,ある
いは社会でどのように役立つかを示して学習意欲を刺激するというのは,やりたかったけれど
今回は手が回らなかったことの一つでした。次回は,もっと実際の物理の問題へ適用した例を
数多く取り入れる予定
です。

また,今回はFFT(高速フーリエ変換)など,非常に重要でありながら時間の関係で紹介すること
ができないアルゴリズム
が数多くありました。FFTについては,たとえば宮下精二著「数値計算」,
朝倉書店,2002 などを見てください。また,私のホームページにもFFTの原理を簡単に紹介した
OHP
がありますので,興味のある人は見てください。


おわりに

以上でアンケートの集計結果は終わりです。繰り返しになりますが,アンケートに協力し,貴重な
意見,提案をくださった皆さん,ありがとうございました。これらは来年度の授業をより良いもの
にするために活かしたいと思います。

それでは,皆さんがこの授業で学んだ数値計算法を活用し,今後の研究や仕事で良い成果を
挙げられることを期待しています。





講義のページに戻る
Topに戻る