第4回レポートの解答と講評

 第4回レポートの提出者は15名でした。4問のうち,問題1,3は授業で省略した
 定理の証明で,それぞれオイラー法の大域離散化誤差が O(h) であることの証明と,
 陽的差分法で現れる行列の固有値・固有ベクトルが解析的に求められることの証明
 でした。両方ともステップを踏んでいけば証明できるようになっていたためか,問題
 3の(3)を除き,正答率は高かったです。

 問題2(1)はリチャードソン加速の簡単な応用例で,ほとんど計算せずにできる問題
 ですが,正答率は40%と極めて低いものでした。大域離散化誤差の概念がしっかり
 理解できていないことが原因かもしれないので,もう一度授業ノートで復習してみて
 ください。

 解答に代えて,鳥越武史君のレポートを載せておきますので,ぜひ見てください。
 なお,問題2(1)と問題3(3)の解答は,私が多少修正を加えてあります。

 各問の考え方,間違いが多かった箇所などを以下にまとめます。


 問題1

 (1) 正答率 100%
 これは,オイラー法の公式をそのまま書くだけです。

 (2) 正答率 100%
 誤差 e_{i+1} の定義式に(1)の結果,(2)式,およびリプシッツ条件の式を代入し,
 e_i,h,K,c の式として表します。詳しくは解答を参照してください。

 (3) 正答率 100%
 上記 (2) で導いた不等式を繰り返し使うと,e_i の上界が等比級数の形で求められ
 ます。そこで,等比級数の和の公式を使います。

 (4) 正答率 100%
 上記(3)の結果にヒントの式を代入して整理すると,誤差が O(h) であることが簡単
 に示せます。


 問題2

 (1) 正答率 40%
 オイラー法の大域離散化誤差が O(h) であるとは,問題1(2) の問題文中にあるよ
 うに,x_0 = a から出発してオイラー法で求めた解 y_i^h(iは下付き,hは上付き添字)
 と真の解 y(x_i) との差が O(h) であるということです。そこで,y_i^h を y(x_i) に対す
 る近似値と見て,通常のリチャードソン加速の手続きを適用すればよいことになり
 ます。やり方は解答を見てください。

 (2) 正答率 33%
 上記(1)で導いた式に基づき,数値計算を行って誤差を求めます。リチャードソン
 加速を行ったときの誤差は h=1/6 のオイラー法の誤差の更に 1/6 程度に減少し,
 リチャードソン加速が少ない計算量で高い精度を達成できる効率的な方法である
 ことがわかります。


 問題3

 (1) 正答率 87%
 これは,固有方程式の各成分をそのまま書き下すだけですね。

 (2) 正答率 87%
 v_0=0 から c_1 + c_2 = 0 が言えて,これを v_M=0 に代入することにより,θに対する
 条件が得られます。

 (3) 正答率 47%
 上記(2)より c_1(または c_2)とθが決まるので,これを v_j の式に代入して簡単化
 すれば,固有ベクトルの第 j 成分が求まります。なお,固有値は M-1 個存在するの
 で,それに対応して v_j も M-1 個求まることに注意してください。また,固有ベクトル
 は定数倍の不定性があることを利用して,答を簡単化することができます。詳しくは
 解答を見てください。


 問題4

 正答率 67%
 偏微分方程式 (2) の代わりに陽的差分法の式を使い,x=a から x=b まで積分する
 代わりにすべての格子点について和を取ります。すると,左辺は時刻 t と時刻 t+k
 における全熱量の差となります。また右辺は,和の中間の項がすべて打ち消しあい,
 両端点における1階差分の差(×熱伝導率)になります。これは,両端から流入する
 熱量の差分近似になっています。


2003年度応用数学のページに戻る