第1回レポートの解答と講評

 第1回レポートの提出者は19名でした。今回の問題は実際のオプション価格の
 調査,重要なデリバティブであるスワップについての説明,簡単なモデルでの
 オプション価格計算など,数理ファイナンスを学ぶための基礎知識に関する問題
 であり,正答率は非常に高かったです。

 解答例として,畝山多加志君のレポート松場弘明君のレポートを掲載しますの
 で,参考にして下さい。他にも優れたレポートはいくつもありましたが,すべて
 ワープロで書かれていてホームページ上に掲載しやすかったこともあり,この
 2つを選びました。

 以下,各問題に対するコメントを述べます。


 問題1

 (1) 実際にCBOEやLIFFEなどのホームページにアクセスし,コールオプションの
    価格を調べる問題です。今後の授業でもこのような生データはできるだけ
    使いたいと思いますので,アクセス方法に慣れておいてください。なお,
    コールオプションでは,当然のことながら,行使価格が安い(安く買える
    権利がある)ほうが一般にオプションの価格は高くなります。

 (2) 一般に,満期が先になるほど,行使価格に対するオプション価格のグラフは
    滑らかになります。また,同じ行使価格に対するコールオプションの価格は
    上昇します。この上昇には,次の2つの理由があると考えられます。

   ・満期が先になるほど行使時点での株価の不確定性が高くなる(すなわち現在
    の株価より大きく値上がり・値下がりする確率が大きくなる)。そのため,
    決まった行使価格で買えるという権利の価値が増大する。

   ・株価は一般に時間とともに(金利より速いスピードで)値上がりするので,
    1ヵ月後にK円で買える権利よりも,3ヵ月後にK円で買える権利のほうが
    値打ちがある。

    提出してもらったレポートのグラフを見ると,どれもほぼ例外なく,満期が
    先になるほどオプション価格は高くなっています。


 問題2

 (1) スワップの定義については畝山君あるいは松場君の解答例を見てください。

 (2) 金利スワップのもっとも簡単な例としては,変動金利で100万円借りている
    が,この先金利が上がると思っているのでこれを固定金利に変えたいA氏と,
    固定金利で100万円借りているが,この先金利が下がると思っているので
    これを変動金利に変えたいB氏とが利息を交換するという例が挙げられます。
    この場合のスワップは,その後の金利の上下によって一方が得をすればもう
    一方が損するというゼロサムゲームとなります。

    ところが面白いことに,もう少し複雑なスワップでは,スワップを行う両者
    ともが得をする場合がありえます。
これについては,松場君の解答例を見て
    ください。

    なお,畝山君の解答例では,「固定金利で借り入れをしているときに変動金
    利とスワップ契約をすることで,金利が下がった場合にはその時点での市場
    の金利を支払うだけでよくなる。金利が上がった場合には権利を行使せず借
    り入れ時の(固定)金利を支払う」という例を挙げていますが,このような
    ことができる契約をswaption(swap + option)と呼びます。オプションと
    同じように,自分に有利な状況が起きた場合にだけ契約を有効にできるから
    です。これに対し,通常のスワップでは,契約をした以上は,金利が上がった
    場合でも市場の(固定金利に比べて高い)金利を支払わなくてはなりません。


 問題3

 オプションと先物という概念を具体的な例で理解してもらうための問題でしたが,
 少し簡単すぎたかもしれません。


 問題4

 これも,期待値と分散の定義がわかっていれば,簡単な積分の練習問題です。畝山
 君の解答例を見てください。


 問題4の代替問題

 授業でやったのと同じ考え方で,数値を入れて計算すればできます。松場君の解答
 例を見てください。なお,(2)では安全資産を -400/11 単位持つという答が出ます
 が,安全資産をx単位持つというのは銀行に(固定金利で)x円預金するということ
 ですから,これは銀行から400/11円のお金を借りるということを意味します。


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