2006年度後期 応用数学 第1回質問シート集計結果


第1回の質問シートへの回答をありがとうございました。
授業でわかりにくかった点の指摘や授業方法に関する意見など,大変参考になりました。

以下に頂いた質問・意見とそれへの回答を載せます。意見に関しては,今後の授業にできるだけ
活かしていきたいと思います。

なお,このページの構成は以下の通りです。

  I. 授業内容に関する質問・コメント
  II. 授業方法に関する質問・コメント



I. 授業内容に関する質問・コメント

(1) 計算機における実数の表現について

  ・浮動小数点の指数部が -125 ≦ L ≦ 128 で,正と負で値が異なる理由が分からなかった。

  ・単精度のとき,なぜ指数部が -125 ≦ L ≦ 128 とマイナスの時3つだけ小さいのかわかり
   ません。

 単精度の場合,指数部は全部で8ビットあるので,L の値としてはたとえば -127 ≦ L ≦ 128 の
 256 個を表現できることになりますね。しかし IEEE 浮動小数点形式では,256 個のうちの
 2パターンを,普通の浮動小数点では表せない数を表現するために確保しています。そのため,
 負の指数の範囲を少し狭め, -125 ≦ L ≦ 128 としています。

 では,普通の浮動小数点では表せない数は何かというと,まず 0 があります(ケチ表現のため,
 仮数部すべてを 0 にしただけでは 0 を表せないことに注意)。ほかにも,無限大(0 による割り
 算の結果など),NaN(Not a Number; 0/0 の結果など),いくつか特別な数があり,確保された
 2パターンはこれらの数を表すために使います。


(2) 数値積分について

  ・シンプソン公式で,黒板ではy_nの係数が2/3となっていましたが,これは1/3でしょうか?

 はい,その通りでした。すみませんが訂正してください。

  ・台形公式からシンプソン公式で項数が変わらないのなら,さらに3次で近似した方が良いの
   ではないかと思った。区間ごとに近似するときの x 軸の分け方は,等分するのはあまり良く
   ない気がした。

 これは鋭い指摘で,その通りです。講義では簡単のため,2次式での近似(シンプソン公式)
 までしか説明しませんが,実際にはより精度を上げるため,3次あるいはそれ以上の多項式
 補間に基づく積分公式も使います。項数は変わらないため,計算量はほぼ同じですが,係数は
 複雑になります。興味のある人は,たとえば次の参考文献を見てください。

 [1] 藤野清次著: 「数値計算の基礎 - 数値解法を中心に -」,サイエンス社,1998.

 [2] W. H. Press 他著: 「Numerical Recipes in C(日本語版)」,技術評論社,1993.

 また,標本点(関数値を計算する x 軸上の点)を不等間隔にした方が精度を上げられるという
 のもその通りです。このアイディアに基づく積分公式には,ガウス型数値積分公式,2重指数型
 数値積分公式
などがあります。また,関数の変化の急激なところで標本点を多く取る適応型
 数値積分
という方法もあります。詳しくは上記の [1],[2] などを見てください。なお,2重指数型
 数値積分公式については講義で説明します。


(3) レポート課題について

  ・レポートの3,誤差 < 10の-3乗になりますか?

 すみません。11/6 の講義後に言ったとおり,問題3の(1)に間違いがありました。補間の区間を
 [-1/2, 1/2] でなく,[0, 1/2] としてください。


II. 授業方法に関する質問・コメント

(1) 板書について

  ・添字が小さくて見えないときがあります。

  ・黒板の添字が小さかったりして見にくいときがある。

  ・もう少しゆっくりと原理を教えてほしい。添字(数字や符号)が見にくいので,もっと大きく
   書いてほしい。

 わかりました。板書は全体に大きめにし,添字がはっきり見えるようにします。授業のスピード
 については,次の項で述べますが,授業中の例題を増やして原理をしっかりわかってもらえる
 ようにします。


(2) 講義中での例題について

  ・授業中に具体的な例題を説明してほしい。

  ・具体的な問題をもう少し示してほしい。

  ・例題などをまじえて具体的な講義をしてほしい。

  ・レポートのような問題も,授業でやってほしい。

  ・試験に出すような問題の例として演習があるとよい。

  ・授業で具体的問題(レポートで出ている問題のような)を解く説明をして欲しい。

  ・もっといろんな問題を出してほしい。近似の式の証明(?)を書かれても,どう実際に使って
   いくのかがわからないです。

  ・具体的な例題を講義中に出していただけるとうれしい。どれも実際的に使えるほど理解
   できていないので。

  ・授業内容には特に質問はないですが,具体的な問題の解き方がよくわかりません。

  ・難しい事を言っていないのかもしれないけど,いきなり式が出てきたり(補助関数とか)
   すると,その式が何を示しているのか,どうしてその式なのかの理解に苦しみます。あと,
   急に出てくる記号が何かわからないまま計算していたりすると,辛いです。

  ・あまりに一般的なものばかりやっているので,レポートを解こうとしてもイマイチイメージを
   つかめませんでした。

 確かに今までの授業では,時間の関係で,例題の説明が不足していたと思います。今後は,
 少し授業内容を削ってでも,具体的な例題を説明する時間を取るようにします。ただ,授業
 中に説明できる例題の数は限られていますので,昨年のページ一昨年のページに掲載して
 あるレポートなども参考にしてください。また,教科書の例題を自分で解いて見るのもいいと
 思います。


(3) レポートの解答について

  ・レポートの答が提出後にはほしいです。

  ・レポート課題の模範解答を来週配ってくれるとうれしいです。

 レポートの解答は,今週中にホームページに掲載します。


(4) パソコンを使ったアルゴリズムの動作の実演について

  ・実際にパソコンで計算例を出すのはいいと思う。どの式が効率的なのかがわかりやすい。

  ・画面で計算した結果を見ると,より実感がともなって理解できる気がする。

  ・パソコンで計算しているのを見るのもよいが,例題を手計算でも示してほしい。テストに
   出そうなもの希望。

 パソコンによる計算例は,アルゴリズムの動作や収束性などを理解する助けになるかと思い,
 導入しています。ただ,3番目のコメントのとおり,手計算で例題を示すのもやはり必要です
 ので,今後はその部分を充実させていきます。


(5) その他の意見・質問

  ・説明は丁寧でわかりやすい。

  ・どうやって勉強すればよいですか。

  ・授業の内容もレポートの問もよくわからないのですが,どうすればよいでしょうか?
   テストが本当に心配です。

  ・眠くなってしまう。

 この講義の目標は,いろいろな数値計算のアルゴリズムについて,その原理を理解することと,
 実際に応用できるようになることです。ですので,この2つを中心に勉強してもらえればと思い
 ます。前者については,授業ノート,教科書などを参考に,各アルゴリズムがどのようにして
 導かれ,どのような理論的性質を持つかを確認してみてください。また,後者については,アル
 ゴリズムに基づいて自分で C か Fortran などでプログラムを書いてみると一番いいのですが,
 難しい場合は,簡単な場合について手計算をしてみると,理解が深まると思います。たとえば
 ニュートン法だったら最初の3ステップ程度,数値積分だったら標本点4つ程度の場合について,
 計算してみてください。

 なお,中間テストでは,講義の最初に言ったとおり,難しい問題は出さず,上記の2つができて
 いれば十分解ける問題を出す予定です。


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